手をめぐる四百字

季刊『銀花』の連載をまとめた『手をめぐる四百字』という本があります。作家、役者、ピアニスト、画家、あらゆるジャンルの著名人が、それぞれ「手」について四百字のエッセーを書いています。生原稿がそのまま載っていて、その人の書く文字そのもの、筆跡、文体、息遣いがリアルに感じられます。

この度パート2が出まして、こちらは女性だけのエッセーを集めたものです。女性だけと言えど、職業や生い立ち、歩んできた道のり、刻まれた記憶よって、こんなにも様々な「手」があるものかと驚かされます。どれも印象的で、これはというひとつをご紹介できません。四百字は原稿用紙一枚ですが、ほんの一枚に収められた「手」の世界は、限りなく広く深いものです。

明日で彼岸が明けますが、この一週間は、ご先祖に手を合わせることが多かったのではないでしょうか。故人を想う時、祈る時、厳かな気持ちの時、自然に手を合わせてしまいます。手は、非常にスピリチュアルな部分なのでしょう。

さて、身に着けるものを選ぶ時、顔映りばかりを気にするものですが、手映りというものも、これ大切です。腕を露出しない着物の場合は特に。袖口から見える手は、まさにその人と成りそのもの。手によく映る色、柄、生地感を発見して行くのも、和装の楽しみです。

この秋は、手について少し考えてみましょうか。