店内をお進みいただくと、ちょっとおもしろいオブジェがあったりします。 久しぶりに出しました。
-
-
一期一会
清水卯一さんの水差しです。釜と同様、50年前に母がお茶のお稽古を始めた記念に、祖母が揃えたものです。一度も使われないままだったので、今回のお茶会では、当初この水差しを取り合わせる予定でしたが、じわじわと水が漏れてきました。急遽、別のものに変更した次第です。水差しは、お米のとぎ汁を入れて、中に膜を作って漏れをなおすそうですね。時間をかけて。果たして、この水差しを使う時はやってくるのでしょうか。
一期一会という言葉通り、お道具の取り合わせも、まさにその時限りのようです。縁がなければ、手元にあっても使えないんですね。母は、若い頃から茶道に縁があり、教えていたこともお茶会を設けたこともありましたが、今回使った釜もこの水差しも、ついぞお披露目できないままでした。稽古にこそ通っていてもペーペーの私が、50年後の今、まさかあの釜でお点前をする日がくるなんて•••。本当にありがたいご縁をいただきました。
きちんとした案内状を出したり、特別なお知らせをすることなく、数日間何となくお茶席ムードを楽しんでいただけですが、予想以上にたくさんのお客様が遊びに来て下さいました。当たり前のことですが、メンバーが違えば会話も違ってきます。毎回が新しい時間でした。一期一会とは、こういうことなのかと、初めて言葉の意味が少し分かったような気がします。ご縁やタイミングは、自分の力ではどうすることもできないことだけに、たいへん不思議で面白いものですね。この連休は、お客様から、お道具から「ご縁」という大切なものを学びました。
-
お茶会の楽しみといえば・・・
お茶会の楽しみのひとつに、お菓子があります。
今回は、伏木のこしむら百味堂さんの生菓子をご用意しました。銘は里ききょう。小振りで、上品なお味です。他にも、千代くるみというお菓子がとても有名です。
菓子器は織部。玉置保夫 造です。
お茶会では、どんなお茶碗でいただけるのかワクワクするものです。真ん中は、大樋長阿弥 造のお茶碗。手触りも良く、味わい深く、大人気でした。
-
秋のお茶会
本日、前庭を望むスペースをお茶席のスペースに変え、簡単なお茶会を致しました。
きちんとした床の間がありませんが、軸を掛け、花を入れ、香合を飾ると、趣きが出ました。
軸:すすきにうずら 花入れ:九谷 花:吾亦紅、秋明菊 香合:白磁、菊
釜、風炉:畠春斎 薄器:平棗、山里 蓋置:大樋 水差:夕がお 棚:桑
畠さんの釜は、50年前に祖母に縁があったもので、この日初めて使いました。50年、よく無事でした。感慨深いひと日でした。
こじんまりと和やかなひとときです。 気になる皆様のコーディネートは、また明日のブログで。 連休の間、お茶会を続行致しますので、是非お出掛け下さいませ。 お着物でのご参加、大歓迎です。 お越しの際には、ご連絡をいただけましたら幸いです。0766-74-6218
-
藤井絞の記憶─桶絞り応用編─
昨日に引き続き、桶絞りのご紹介です。
細長く染め分けされておりますこちらの名古屋帯も、桶絞りです。一般的な桶絞りとは技術力も雰囲気も違うので、桶絞 り応用編というところでしょうか。
中の白い部分は、ひと粒ひと粒、手で括って防染する本疋田絞り(ほんぴったしぼり)。とても力がありますが、主張しすぎ ることなくお洒落を楽しめる帯です。これから、秋が深まるシーズンにいかがでしょうか。
着物も藤井絞製。帽子絞り、紬の小紋です。ハートのような柄がキュートですね。大人の可愛らしさを演出できそうです。
-
藤井絞の記憶3─桶絞り─
藤井絞に関する記憶の中で、最も印象深いのが「桶絞り」という言葉です。文字通り桶で染め分ける絞り技法ですが、繰り返し聞かされ、とにかく言葉だけは脳にインプットされました。
こちらが、桶絞りで使う桶です。
ただの桶ではありません。絞り専用の桶です。専用ですから、この桶だけを作る職人さんがいらっしゃいます。
さて、蓋の下から茶色に染まった生地が顔を出しているのがお分かりでしょうか。たった今、染め職人さんのところから茶色に染められて帰ってきたばかりです。(藤井絞さんにお邪魔すると、よく桶に遭遇します。この写真も藤井さんで撮影したものです。)次は、桶に生地を仕込む職人さんのところへ運ばれ、違う色に染めたいところが桶の外に出るように様子を変えます。こうして、二カ所の職人さんの間を行ったり来たりします。色数が多いほど手間がかかります。
大きな面積を染め分けるのが、桶絞りの特徴です。こちらの振袖をご覧下さい。
赤、紫、緑が大きく美しく染め分けられています。その間に細い黄色の部分がありますね。これも桶で絞るのですが、このように細い部分を染めるのは非常に難しく、熟練した技術が必要とされます。生地をはさんで蓋を締める作業は、本当に神経をすり減らす仕事です。締め過ぎては生地を痛め、緩いと色が混ざり合ってしまいます。このように、くっきりときれいに染め分けれられているのは、素晴しい技の結晶です。
それから、色の美しさにいつも圧倒されます。染めが良いと、原色ばかりが同居しても喧嘩しません。どの色もその特色を出しながら、他の色をも引き立たせているようです。
人間同士もこんな風だったら、関係がとてもスムーズに行くのになぁ、なんて考える時もあります。
藤井絞の記憶─階段─、藤井絞の記憶─好き嫌いをしたらあかん─