• ウォルナットの整列

    カウンターの一番奥の席にて、朝。きちんと整列するウォルナットの椅子たち、視線の先にあるスリッパの戸塚刺繍。気持ちを整え、これから始まる一日に想いを馳せます。人と人の出入りが偶然に生み出すタイミングは、本当に不思議ですね。毎日読めません。今日も筋書きのないドラマが始まります。

    椅子


  • 素夢子にて

    さて、展示会の帰りは、久しぶりに譽田屋さんの経営する古茶屋 素夢子に立ち寄りました。韓国のお粥、お茶、漢方ケーキ、お菓子など本格的な味が楽しめます。柿渋で統一された店内は、一瞬にして異空間に入り込んだような、独特で落ち着いた雰囲気です。この日は残暑が厳しく、韓国冷麺をいただきました。ソバ粉とイモデンプンを折込んだ麺に、少しピリ辛のつゆと、お野菜を絡めて。夏だけの限定メニューです。

    九月に入っても日差しの厳しい日には、変わり絽の着尺をよく纏います。無地のように見えますが、実は柄があります。色も、白でもベージュでもない微妙な色。何となくボヤボヤと、はっきり実態のない雰囲気が(笑)気に入っています。譽田屋さんの本羅の帯を締めて。母の代からの愛用品です。帯は、長い時間をかけて身に付けると本質がよく分かります。この帯は、打ち込みがしっかりしているので、どれだけ時間が経ってもびくともしませんし、デザインもまったく古びませんね。むしろ、新しい感覚を覚えるほどです。

    絽

    籐のバッグも、まだまだ活躍します。

    籐

    暑い中、着物を纏うことは大きな我慢ですが、その我慢こそ日常にメリハリを持たせる良い刺激でしょう。着物に限らず、きちんと身支度をして、どこかに伺い神経をフルに使うことは大切ですね。


  • 千代に八千代にー譽田屋源兵衛さんを訪ねてー

    先週は、譽田屋源兵衛さんの展示会へ。今回のテーマは「千代に八千代に 継ぎにしもの」。譽田屋さん発祥の地、譽田八幡宮の千七百年紀を迎えて、吉祥の起源である聖数「八」をいろいろに帯で表現した会でした。末広がりを意味する「八」は、日本人にとって大きな意味を持つ数字ですね。
    印象的だったのが、和歌の始まりであり出雲の国の起こりとされる「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」テーマに八雲を織り出した帯。雲は、八の字のような形でもくもくと上昇するので、更に発展するという意味です。糸の微妙な色合いと相まって、とても厳かな雲がそこにありました。お見せできないのが、残念です。
    それから、蜂が八匹、織り出された帯。八角形のハチの巣も、周りにびっちりっと…。ハチ尽くしの帯でございます。白地に、蜂がとってもキュートに織り出されていて、お洒落にもセミフォーマルにも着回しのきく素敵な帯です。名古屋もありますので、興味のある方は絲穂にお出かけ下さい。イメージをお見せ致します。
    次代に継ぐべききもの文化ですが、上っ面だけが先行しがちな今だからこそ、きちんと文化の底にあるものから伝えて行かなければなりませんね。日本人が継いできたものを、ゆっくりと時間をかけて。譽田屋さんに伺うと、呉服に携わる者の役割を改めて考えさせられます。


  • 氷見某所にて

    「裏管理人」です。先月の氷見潜伏の際に、約2年ぶりくらいにあるお店に足を運びました。気取りのない、実に居心地がいい居酒屋(小料理屋)さんで、どの料理も本当に美味しいです。

    まずつきだしで出た、なすと一緒にカレイ(ヒラメだったかな?)の骨せんべい(骨を揚げたもの)に甘酢をさっとかけたもの。魚のこういうアラの部分を上手に調理するところに、料理の腕が光っています。これだけで、生ビール1杯いけました。

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    お造りです。魚の新鮮さは言うまでもありません。上品な薄切りではなく、あえてゴロっという感じでざっくりと切って出してくれます。野趣あふれる食べ方です。

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    ポテトフライとチーズの包み揚げ。こういうおつまみ風の料理も実に美味しいです。どこのチェーン店の居酒屋にもありそうなメニューですが、ちゃんと手作りしてるので、味がまったく違うのがわかります。

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    シーザーサラダ。とびきりいいお刺し身を出す一方で、こういう洋風のメニューも充実しています。お酒があまり飲めない人でも、こういう料理がうれしいですね。

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    これはちょっと珍しい「なっとうのステーキ」という料理。納豆と長芋を混ぜて、軽く鉄板鍋で焼いた料理です。軽いお好み焼き風という感じでしょうか。

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    牛筋の煮込み。こういう時間と手間がかかる料理も、はずれることなく美味しいです。臭みが全然ないので、内臓系が苦手な人でも大丈夫です。

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    串カツです。揚げ物も上手です。

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    この他焼きそばも取ったのですが、食べたり飲んだりに夢中で、写真を撮り忘れてました。満腹でお腹が苦しくて、就寝時にうめくほど飲み食いしました。

    この店やきときと舎に行くたびに、こういう店が近所にあるといいのにと、いつも思ってしまいます。残念ながら、「絲穂関西出張所」(笑)の近所には、飲食店はそれなりにあるものの、このような、どの料理を食べてもはずれがなく、しかも値段も手頃という店がありません。中途半端に都会であることの悲しさが、「出張所」の周辺にはあります。

    このお店、あえて「某所」とさせていただきました。決して大きなお店ではありませんし、近所の人たちの、ちょっと近所で外食(と飲み)でも、というような気軽さを、壊さないほうがいいのではないかと思いましたので。あえてヒントを出すならば、絲穂の近所、ということでしょうか。


  • 今秋は、紫系が人気です

    こちら、お客様がお持ちだった白生地を単衣用にと染めたものです。きれいな藤紫ですね。もちろん、お客様のお好みがそれぞれありますが、今秋は紫系が人気です。春単衣にも秋単衣にも着回しができますし、華やかさと上品さがあります。今年の秋は、紫にチャレンジされてはいかがでしょう。

    紫色無地


  • 男の子の四つ身

    今夏、男の子が誕生され、節目に正式のお着物を揃えられたお客様がいらっしゃいます。贅沢なお誂えを、少しご紹介します。

    加賀は手描き友禅の四つ身一式。着物とお揃いの羽織も、素晴らしいですね。

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    鱗模様の襦袢は、何とも言えない素敵なお色です。袴ももちろん別注ですが、ここでは勿体なくて、全部お見せできません。

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    いつか、成長された男の子が、一揃えを纏う日がやって来た時に…。

    お楽しみは取っておきましょう。


  • 市松人形のお嫁入り

    当店にやってきて、十年余りご縁を待っていた市松人形が、今月とうとうお嫁に行きました。着ている振袖は、糊糸目の手描き友禅。襦袢は魔除けのウロコ柄。帯は唐織。きちんと足袋も履いています。すべてこの人形のために誂えた衣装を纏い、ずっとずっと、大事にしてくれる嫁ぎ先を待っていました。その何とも言えない愛らしい表情が人気で、これまでも何人かのお客様からお声がかかっていたのですが、今年ようやく運命の人に巡り合ったようですね。ご縁とは、本当に不思議。あっと言う間に事が運ぶものです。今ごろは、嫁ぎ先で幸せにしていることでしょう。

    市松人形