今日は、二十四節季のひとつ「雨水」です。空から降るものが雪から雨に変わり、雪が溶け始める頃を意味します。
寒さは続きますが、近ごろは随分と日が長くなりました。春の足音は、すぐそこまで聞こえているのでしょう。
陽射しが待ち遠しいこんな日は、威勢の良いたけのこの暖簾で、生命の息吹を味わいましょうか。
富山県氷見市の呉服屋 きものの館絲穂
先日もご紹介しました、祇園のない藤さん。外のディスプレィには、舞妓さんが店出し(デビュー)の時に履く、おこぼが飾られています。あの、すぐに転んでしまいそうな、背のたか〜い高い履物です。さてあのおこぼ、どうしてあんなに高さがあるんでしょう。それは、玉の輿に乗れますようにとの意味が込められているからなのだそうです。これからどんどん教養を高め、自分自身を高めて、いつか良い旦那さんに巡り会えますように、とのことなんだそうです。
ない藤さんの前を通られたら、御覧になってみてください。
縄手通りを入ってすぐに、懐紙や和紙の封筒などを扱うお店があります。そこで何かお買い物をすると、舞妓さんがお座敷で使っている「鼻紙」がもらえます。普通のティッシュではないんですねぇ、これが。ない藤さんまでの道すがら、そんなプチラッキーも楽しめます。
近ごろのエントランスです。
着物は、臈纈染めで幾何学模様を表現した無地的な小紋。帯は、きっちりとした友禅の染め名古屋帯(染めの百趣矢野)。帯締めも、春らしい色がいろいろと揃っております。
雨も風も冷たく、まだまだ寒いですが、気分だけは春を感じて、店内をゆっくり御覧下さいませ。
祇園の老舗履物商、ない藤さん。当店も40年以上お世話になっています。足型を取り、100%オーダーメイドのお履物。足元の装いは、コーディネートの要であることを教えられます。ない藤さんでは、草履を装履、鼻緒を花緒と表現します。まさに、装いを完成させるための履き物、足を入れた瞬間、心地いい緊張感が走ります。自分の足にぴったりとくるだけでなく、その緊張感で、さぁ行こう!という気合いが入ります。さて、こちらのスリッパは、そのない藤さんでオーダーしたものです。内側を赤にしてみました。色の組合わせは、お好みで作っていただけます。
急な来客にも、落ち着いて対応できるお助けアイテムです。
藤井絞のお座布団と、ない藤さんのスリッパ、これだけ揃えば無敵です。
お装履と同じように素敵な箱に入ってきます。
本格的な大学受験のシーズンです。受験生たちの姿に、自分が受験生だった頃を重ねて見てしまいます。その時に大変お世話になった藤井絞の会長さんのこと(当時は社長さんでした)を思い出します。会長さんは、関西の大学に入学が決まった私のため、下宿探しから、付近の案内、時々は食事に連れて行ってくださったり、本当にいろいろとお心遣いをしてくださいました。
その中で、大学とはいかなるところかということを教えてくださいました。「これからは、語学ひとつ取っても英語だけでなく、様々な外国語を学んで、学を深めて行かれることでしょう。大学は、学問の場ですからもちろん勉強は大事です。同時に、大学とは今まで出会ったことのないいろいろな人との出逢い、関わりの中で、たくさんのことを学び、知り、視野を広め、自分という人間をつくり上げて行くところです。出逢いの中で、大いに学んでください。」
当時は、ピンときていませんでしたが、大学を卒業し数年を経た今、その言葉の意味をひしひしと感じます。人と自分を照らし合わせて、自分とはいかなる人間か、何を選択するのか、どうありたいか、そんなことばかり考えていました。書物と向き合っても、人と向き合っても、「生きる」ことや「自分」について思い巡らせる時間の連続でした。当時、何も分からない私に、大きな言葉を教えて下さった会長さんに、今さらながら感謝をする今日この頃です。