漂流する女性作家

ある女性雑誌を読んでいて、たまたま小さなコラムに目が留まりました。漂流、放浪の女流作家、というようなテーマで、何人かの日本の女性作家の作品を紹介していたのですが、その中の一人に、武田百合子の『遊覧日記』が含まれていました。

夫(武田泰淳)を亡くした後の生活の中で、写真家の娘と東京都内を「漂流」しながら、その時の経験をまとめたものなのですが、彼女独特の視点からつむぎ出される文章は、 単なる身辺雑記を超えて、芳醇な散文詩のような味わいをもっています。さらりと読めますが、読後に、心の中に透明な結晶を残すような感じですね。

新年度を迎えて、何かと気忙しい日々が続いていますが、そんな週末に、こういう本をじっくりと味わいたいものです。