• 昭和54年者

    ワタクシゴトで恐縮ですが、今月30歳になりました。こちらの二反の小紋は私と同い年です。昭和54年に祖母が仕入れました。

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    20年30年あるいはそれ以前の反物が、蔵や箪笥の奥からよく出てくるのですが、その価値が全く損なわれていないことにいつも驚かされます。むしろ、今の時代には更なる価値を持って輝きます。もし自分だったら、長い長い間だれの目にも触れず、存在を認められずにいてそれでも、きちんと「自分」であり続けることができるだろうかと思います。反物はすごいですね。いつもいつも「そのもの」であり続けることができる。時代や流行に流されない芯の強さを感じます。だから本当に美しいのでしょう。

    きものの世界には、染色や技法の奥深さから学ぶことも数えきれないほどありますが、その存在そのものから刺激を受けることもまた多くあります。同い年の反物を目の当たりにし、ブレない人間にならなくてはと痛感するばかり。以前は、美しい反物に囲まれていることをただ単純に幸せだと感じていましたが、段々と、その気持ちに責任感やプレッシャーが加わってきました。その責任感といかに向き合って行くかということに、30代のテーマはありそうです。


  • 生物と無生物のあいだ

    ちまたではインフルエンザが大流行しておりますが、みな様はご無事でしょうか。

    ウィルスとは、生物でもあり無生物でもあるのだそうです。栄養を摂取することもなく、呼吸もせず、老廃物を排泄することもない点では無生物なのですが、いったん細胞に寄生すると、そのDNAを複製し、増えるのだそうです。この自己複製能力を持っているという点において、生物と呼ぶことができるとのこと。今まさに私たちは、生物と無生物のあいだを行ったり来たりするナゾの存在に悩まされ、不安にさせられているのですね。

    ウィルスを生物とするか無生物とするかは未だに決着のついていない議論だそうで、こんな時期に不謹慎な言い方かもしれませんが、こんなにも人を翻弄するウィルスとは、ある意味では魅力的な「何か」なのかもしれません。

    今、私の手元には『生物と無生物のあいだ』という本があります。みな様も一度読まれれば、ウィルスに対する考え方が変わるかもしれません。著者は「生命とは自己複製するシステムである」というだけでは、ウィルスを生物とは定義できないとした上で、自己複製システム、つまりDNAや遺伝をテーマに論を展開し、生命とはいかなるものであるかを本書において述べていきます。

    この本は科学の知識が全くなくても読み進めることができます。小説を読んでいるような感覚です。とても興味深かったのは、細胞にも「ふるまい」方があるというくだり。英語で”behavior”まさに「ふるまい」、立派な専門用語です。読めば、細胞もわれわれと同じようにふるまっていることがわかります。この本を読んで、体の中でも、人と人との関係と同じことが行われていることがわかって、科学をとても人間味があふれる学問分野なのだと考え直すようになりました。理系は苦手という方にもオススメです。

    このようなご時世だからこそ、生命とは何かを見つめてみるよいチャンスではないでしょうか?

    そろそろマスクは外してみませんか。


  • 絲穂の楽しみ方5

    絲穂では、毎朝お香を薫いています。何十年変わらない香りです。お気に召せば、一箱1500円でお分け致します。ちょっとしたプレゼントにも喜ばれています。一日の中でちょっと気分転換をはかりたいとき、お香でリフレッシュするのもいいものですよ。


  • 絲穂の楽しみ方4

    カウンターに座ってみましょう。なが〜いカウンター、ケヤキの一枚板です。マットは柿渋で別注したもの。使い込むほどに良い色合いになって行きます。

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    イスは、無垢のウォルナット材。使い込むほどに良い色になります。すべて木目の表情が違いますから、お好みの顔をしたイスにお座り下さいませ。ついつい長居してしまう座り心地です。座布団は、テーブルマットと合わせて柿渋で別注したもの。皆さまのお尻で、歴史を刻んで下さい。

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    季節の花へも目をお留め下さい。今日の花は情熱的なフリージア。お客様にいただきました。

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    絲穂の楽しみ方

    絲穂の楽しみ方2

    絲穂の楽しみ方3


  • エナメルのお草履

    エナメルのお履物、お振袖や訪問着にいかがですか。 また、単衣から盛夏にかけてもエナメルのお草履があるとお洒落です。鼻緒はいろいろなデザインのものを揃えておりますので、台と鼻緒をお好みで組合わせ、あなただけの一足をお誂え下さいませ。

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  • 絲穂の楽しみ方3

    絲穂には喫茶メニュー表がありません。敢えて作っていません。コーヒー、紅茶、ココア、こぶ茶、サンドイッチ、トーストいろいろあります。常連さんになると、ピザトーストやフレンチトーストなんて通な注文もあります。これからの季節におすすめなのが、ソーダ水またはその上にアイスがのったクリームソーダ。まず、そのきれいな色で人気です。敢えて写真を出しませんので、どうぞお越しになって注文してみて下さい。

    絲穂の楽しみ方

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  • 小紋付け下げというすぐれもの

    こちら、小紋付け下げと申します。小紋でもあり、付け下げでもありますから帯次第でフォーマルもセミフォーマルもこなせます。名門、野口の臈纈染め。柄行きといい、色合いといい大変お洒落な一枚ですね。帯は上原美智子作、無地の名古屋帯。光の当たり具合で様々な表情を見せる、絶妙な織り感が魅力です。

    単衣の時期にも結婚式やパーティに招待されたり、格式あるお茶会に招かれたりする機会が結構ありませんか?そんな時は、このような小紋付け下げが一枚あると助かります。この取り合わせで春単衣も秋単衣もバッチリです。

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    春には、単衣〜盛夏用のすっきり色の帯締めで。

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    秋にはグッと深い色の帯締めを合わせて。同じきものと帯でも、帯締め一本で雰囲気がガラリと変わります。

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  • 続:単衣も江戸小紋を

    さて、単衣向きの江戸小紋をいくつかご紹介致します。江戸小紋と言うとシックなイメージばかりが先行しますが、そうではありません。明るく華やかなタイプもございますので、どうぞご覧下さい。

    こちら、市松模様の中に細かい細かい橙色のドットがあるタイプ。赤でもなく、ピンクでもなく、ベージュでもなく、微妙な色合いが上品ですね。

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    アップにすると、こうなります。

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    こちら、少し太い縞模様の江戸小紋。

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    アップにしてみましょう。よく見ると、緑と黄色の共演です。縦縞模様は、きっぱりと粋な柄ですが二色で表現されていることにより優しい雰囲気に仕上がっています。粋なものはちょっと苦手という方にもオススメの一枚です。

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    さて、こんなのはいかがでしょう。一般的な江戸小紋とはひと味違いますね。柄が少し大きめですから、無地っぽいものに抵抗のある方にも楽しんでいただける一反でしょう。

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    江戸小紋は、型染めの一種です。型をすべて手で彫ることから始まります。細かいドットもひとつひとつ手彫り。小さい桜の花を彫る場合も、花びらを彫る道具と花の中心点を彫る道具は違います。すべて手作業で彫られた型を、白生地の上にのせ染料をかけて染めます。長い白生地の最後まで同じことを繰り返します。型と型のつなぎ目の染めが一番難しいそうです。そこがつなぎ目とわからないようにするためには細心の注意が必要ですから。すべて人の手で作られたものは、実際に身に纏うとふうわりと柔らかな雰囲気になります。色も、ずっと見ていたくなるような優しい感じ。機会で大量生産されたものは、カチカチ、ガチガチ。目を突くような色をしています。

    江戸小紋未体験の方、是非一度お召しになって下さい。生地も上質で、肌に触れる感覚がとても良いんですよ。幸せを感じるきものです。


  • 単衣も江戸小紋を

    単衣を纏う時期は、一般的に6月(春単衣)と9月(秋単衣)と言われておりますが、5月も連休の頃から随分と気温が上がりますから、20度を越す陽気の日は私は迷わず単衣に袖を通します。動くと暑いですから。

    また、夏が終わっても、昨今は残暑がいつまでも厳しいですから何となく10月いっぱい単衣が放せません。年間を通して、気温の高い時期が増えました。旧来の概念にあまりとらわれず、臨機応変に単衣を活用されることをお薦めします。

    そこで、春にも秋にも着回せる単衣のきものを紹介します。今回もワタクシゴトのきものから。 以前にもご紹介しましたこちらの江戸小紋、春単衣には献上帯などすっきりとした帯を合わせ、爽やかな印象に。

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    秋単衣の時期には、濃い色目の帯を。合わせて帯締め帯揚げも濃い色に変え秋の気配を出して行きます。写真の帯は、臈纈染めのもの。臈纈染めの特徴は、印象がとても柔らかなことにあると思います。袷の時期と盛夏の時期をうまくつなぐ、単衣の時期にぴったりの染め技法ではないでしょうか。

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    さて、明日は単衣向きの江戸小紋を数点ご覧に入れたいと思います。お気に入りが見つかりますように。


  • バラとあじさい

    いつも素敵なお花をプレゼントして下さるお客様がいらっしゃいます。今月は、バラとあじさいをいただきました。 こちら、本当に珍しいバラです。名はブラックティー。神秘的な雰囲気で、いらっしゃるお客様を魅了していました。

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    こちら、あじさい。と言っても、一般的なあじさいとはひと味、ふた味違いますね。ひとつひとつの花の可憐なこと!しばらく二階に飾りますので、お着物を御覧になる際には是非あじさいにご注目下さい。色も上品で本当にきれいです。

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