時々、双子の椿に出くわすことがあります。後ろの蕾も、そろそろ顔を出すようですね。
こんな日は、一日をとても幸せに過ごせます。
富山県氷見市の呉服屋 きものの館絲穂
祖母や両親からよく言い聞かされてきたことです。「お金には足がついていて、好きじゃない人の元からは、すぐに逃げて行くんだよ。だからお足と言うんだよ。」
殊に祖母は、本当によくお足の話を聞かせてくれました。どうすれば、お足に好いてもらえるのか。自分でしようと決めた買い物には、きちんと支払うこと。今まで手元にいてくれてありがとうという感謝を込めて、きっぱき、すっきり、モノと交換する。そうすれば、必ずまたお足は、自分のところに戻ってきてくれる。お札の顔はきちんと揃える。しわくちゃのお札はアイロンで伸ばすなど。
出し惜しみすれば来てくれず、貯め過ぎては反動でとっとと逃げて行ってしまうという、なかなかお付き合いの難しいお足さんですから、好かれることは、もひとつ難しいことでしょう。お金の使い方、使い道に悩み多きこのご時世、節約や安売りの文字を見る度に、祖母のお足談を思い出します。難しいことでしょうけれど、とりあえずは、お足に好かれることを考えてみる方が賢明かもしれません。
雑誌『和樂』1月号の人気連載ページに、森田空美さんの着物コーディネートがあります。1月号では、初釜やパーティー向けの正装が紹介されているのです が、とても素敵な提案ばかりです。必ずしも袋帯を締めることばかりがフォーマルではないこと、織りの着物や帯は、必ずしも染めのものより格下ではないこ と、まさに現代のライフスタイルに合ったフォーマル、必見です!着物と帯のコーディネートは、染めや織りに拘るのではなく、柄や色の組合わせで格を決め、 読み解くものというくだり、まさにその通り!ですね。柄や色にはきちんと意味がありますから、それを知った上で装うことがとても大切です。
森田さんは、江戸小紋の着回しをよく提案されており、当店でもそれを参考に、よく店内のコーディネートをしております。
『和樂』1月号、読んでみて下さいね。
今日は、谷川俊太郎さんの「手紙」という詩をご紹介します。繰り返し読めば読むほど、深く心に入ってくる感じです。以前、谷川さんの朗読ライブを聴いた時、一番印象に残りました。声に出すと、とてもきれいです。
近ごろ、手紙を書いてますか?文字でしか伝えられないことって、意外とたくさんあるんですよね。
<手紙>
電話のすぐあとで手紙が着いた
あなたは電話ではふざけていて
手紙では生真面目だった
<サバンナに棲む鹿だったらよかったのに>
唐突に手紙はそう結ばれていた
あくる日の金曜日(気温三十一度C)
地下鉄の噴水のそばでぼくらは会った
あなたは白いハンドバックをくるくる廻し
ぼくはチャップリンの真似をし
それからふたりでピザを食べた
鹿のことは何ひとつ話さなかった
手紙でしか言えないことがある
そして口をつむぐしかない問いかけも
もし生きつづけようと思ったら
星々と靴ずれのまじりあうこの世で
当店のサロンスペースでは、ゆったりと時間を過ごしていただくために、いろいろな雑誌を揃えております。個人的に雑誌『ミセス』が近ごろ気に入っています。
12月号の記事に感銘を受けたものがありました。以前にこのブログでもご紹介しました(2月12日)料理家の辰巳芳子先生の特集ページです。命の源であるスープを、食べものが喉を通りにくい病人にこそ食べて欲しいという先生の取り組みと、実際に先生のレシピに沿ってスープを作り、病人を看取った方からの感謝の手紙が紹介されています。
次々に転移するガンと脳梗塞を患い、食事もろくにとらなくなった父親に、辰巳先生のポタージュを飲ませたところ、一口いただいてから両手をひざに降ろされてしまったそうです。ああ、やはりダメだったかと思ったところ、「私には娘がおります。」と目の前の娘さんに仰ったそうです。「このスープを食べさせてやりたいから、娘を連れてきて下さい。」と。もはや、目の前にいるのが実の娘とも分からない状態であったにもかかわらず、自分を思ってくれる父の 優しさ、その瞬間に、スープが与えてくれた優しい時間を感じられたとのこと。
読んでいて、心を打たれました。こんな優しさもあるんですね。優しさの在り方は様々ですが、心も体も温かくなるスープの優しさに触れてみてはいかがでしょう。是非、『ミセス』を手に取って御覧下さい。それから、『あなたのためにーいのちを支えるスープ』も併せて。
「優しい」と「優れる」、どちらも同じ字を当てます。本当に優しいものは、本当に優れているのでしょう。優しいスープほど優れた食べ物はないのかもしれません。