纈(けち)こそ絞りの始まりぞ

絞りとは、布の一部をつまんで糸で括ったり、線や形に縫い締め、模様を染める染色法です。日本にもたらされたのは、奈良時代。シルクロードを通って正倉院に伝えられた染色品の中に、絞りの原型が見られます。

板締めによる挟纈(きょうけち)、ロウ防染の臈纈(ろうけち)、絞り染めの纐纈(こうけち)は三纈(さんけち)と呼ばれ、「纈」とは絞りを意味しました。

「絞り」というと非常にポピュラーな名称ですが、歴史は8世紀にまでさかのぼるのですね。インドの女性が纏うサリーにも絞りが施されていますし、アフリカやザイールなどでも絞りの技術は見受けられますが、日本ほど繊細で豪華な絞り染めが発達した国はないと言われています。本疋田絞りなどは、まさに日本人の感性の集大成でしょう。日本人が大切にしてきた文化、感性はずっと大切にしたいものです。

さて、今回『美しいキモノ2004春号』に掲載されました河上繁樹教授(関西学院大学)の資料を参考にさせていただきました。さらに詳しく調べられたい方は、『織りと染めの歴史ー日本編ー』河上繁樹、藤井健三著、昭和堂、1998をおすすめいたします。