男の人ときもの

先日在庫の整理をしていたところ、男物の紋付と袴の生地がたくさん出てきました。昔は、結婚という節目にきっちりと男性のきものも一揃え誂えたものなのですね。自宅の箪笥の中でも父のきものに遭遇することがあるのですが、男性が身に着けるものには女性をハッとさせる雰囲気があります。きっぱりと、美しい。女性の晴れ着とはひと味違いますね。民族衣裳には、男らしさ女らしさというものがきちんと反映されていることを痛感します。

一昨年でしたか、歌舞伎役者の市川団十郎、海老蔵さん親子がパリオペラ座で公演されたときのこと。その特集をしていた雑誌の中に、衝撃的な写真が一枚ありました。黒紋付に袴姿の役者たちが、黄金の間でパリの紳士たちと並んでいるもの。高い高い天井のゴールドで統一された広間に、紋付と袴が見事にマッチし溶込んでいました。本当に美しかった。紋付袴の日本人と、タキシード姿の紳士たち。異なった文化を持つ人々が、何の違和感もなくそこにいました。 紋付に袴という究極にシンプルな装いは、異国のきらびやかな文化に匹敵するほどの、時にはそれを凌ぐほどの力を発揮するのでしょう。

日本の衣裳は美しい。男性が纏うと、なお。

“市川團十郎・市川海老蔵 パリ・オペラ座公演 勧進帳・紅葉狩(DVD付) (小学館DVD BOOK―シリーズ歌舞伎)” (小学館)


男の人ときものへの2件のコメント

  1. アバター 46
    46 コメント投稿者

    そうですよね!
    私も同感です。
    成人式のギャル男のような和服ではなく、
    きっちりしたイメージの和服には、
    憧れます。
    あれもやはり、
    人間の内面部分が浮き彫りになっているのでしょうか?
    不思議ですよね。
    でも正装というものは、
    身を引き締める道具ですね♫

    • アバター miccho
      miccho コメント投稿者

      いつもコメントをいただき、ありがとうございます。

      近頃は、若い世代にも着物を浸透させようと、古着を着崩した着方を教えたり、着物の質(文化的なこと)を伝えずにとにかく柄や色だけで選ばせたりする風潮がありますが、やはり和装はまず、きっちり身に着けること、この着物はどのようなものなのかをきちんと伝えることが第一だと思います。ただ身に着けるだけでは着物を着たことにはなりませんよね。

      仰る通り、身が引き締まる感覚を伴ってこそ「和装」です。まずは、きっちり。着崩すのはそのずっと後。しかし、和装ほど内面が浮き彫りになるものはありませんね。いつも、自分への挑戦です。