• 藤井絞の記憶3─桶絞り─

    藤井絞に関する記憶の中で、最も印象深いのが「桶絞り」という言葉です。文字通り桶で染め分ける絞り技法ですが、繰り返し聞かされ、とにかく言葉だけは脳にインプットされました。

    こちらが、桶絞りで使う桶です。

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    ただの桶ではありません。絞り専用の桶です。専用ですから、この桶だけを作る職人さんがいらっしゃいます。

    さて、蓋の下から茶色に染まった生地が顔を出しているのがお分かりでしょうか。たった今、染め職人さんのところから茶色に染められて帰ってきたばかりです。(藤井絞さんにお邪魔すると、よく桶に遭遇します。この写真も藤井さんで撮影したものです。)次は、桶に生地を仕込む職人さんのところへ運ばれ、違う色に染めたいところが桶の外に出るように様子を変えます。こうして、二カ所の職人さんの間を行ったり来たりします。色数が多いほど手間がかかります。

    大きな面積を染め分けるのが、桶絞りの特徴です。こちらの振袖をご覧下さい。

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    赤、紫、緑が大きく美しく染め分けられています。その間に細い黄色の部分がありますね。これも桶で絞るのですが、このように細い部分を染めるのは非常に難しく、熟練した技術が必要とされます。生地をはさんで蓋を締める作業は、本当に神経をすり減らす仕事です。締め過ぎては生地を痛め、緩いと色が混ざり合ってしまいます。このように、くっきりときれいに染め分けれられているのは、素晴しい技の結晶です。

    それから、色の美しさにいつも圧倒されます。染めが良いと、原色ばかりが同居しても喧嘩しません。どの色もその特色を出しながら、他の色をも引き立たせているようです。

    人間同士もこんな風だったら、関係がとてもスムーズに行くのになぁ、なんて考える時もあります。

    藤井絞の記憶─階段─藤井絞の記憶─好き嫌いをしたらあかん─


  • おだまき

    氷見にお越しになったなら、おかべさんの「おだまき」を、是非どうぞ。

    中のあんと外のお餅のバランスが絶妙で、クセになります。

    定休日は水曜。 午前中に行かなければ売り切れてしまいます。

    お赤飯も、とても美味しいですよ。

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  • 店内、お月見モードでございます

    お月見シーズン限定の名古屋帯、とってもお洒落ですよ。

    写真は、お太鼓の部分。実は、お腹に出る模様とストーリーになっています。

    さて、前はどんな風になっているのでしょうか。店内でお確かめください。

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    素敵な花入れタペストリーも入りました。店内お月見モードでございます。

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  • 夏を惜しんで小千谷ちぢみ

    先週、最後の夏日に神戸はアンティークアナスタシアの奥さまと着物でランチをしました。夏を惜しんで、小千谷ちぢみ。その日は、半幅帯のアレンジを楽しまれました。麻葉模様のリバーシブルの帯、すっきりと素敵です。大人の女性にオススメしているこの変わり結びは、複雑に見えて30秒もあれば完成してしまう便利なもの。椅子の背もたれにもたれても、潰れる心配がありません。紺と白をうまく使い分け、上級者の風情です。

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    さてバッグは、科布。アンティークの時計は 、紺のベルトが効いていて、全身のコーディネートとぴったりですね。襦袢は、サラサラと心地よい綿シルク。襦袢の柄も麻葉模様なんですよ。

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  • 雑誌『和樂』

    小学館から発行されている『和樂』という雑誌があります。毎号、いろいろな文化や芸術が凝縮されていて、とても読み応えのがあります。 今年から、店頭での販売も始まったそうなので、一度手にしてみて下さい。現在は、表紙に壇れいさんが起用されています。かつては、草刈民代さん、天海祐希さんなど、凜とした美しい女性が常に表紙を飾りますので、それがまず楽しみです。

    合わせて読みたい、雑誌『金澤』。


  • 『にんげんのおへそ』高峰秀子

    日本を代表する大女優、高峰秀子さんのエッセイ『にんげんのおへそ』。有名人から一般人まで、自分と関わるいろいろな人たちとのエピソードが書かれています。日常の出来事ですが、ユーモアたっぷりリズム感がよく表現されています。読み終わると、すっきり爽やかな気分になります。どんなに売れっ子になっても、ひとりの人間としてのブレない生き方をする高峰さんは、憧れの女性です。

    合わせてどうぞ。『おいしい人間』


  • 『かさ』太田大八

    『かさ』という絵本があります。文字が一文字も出てこない絵本です。文字がないだけに、なお伝わる心情があります。最後には自然とほほえんでいます。大人にも是非オススメです。印象的な色彩もお楽しみ下さい。


  • 『白洲正子のすべて』

    白洲正子の愛したもの、こと、交友関係、次郎との出会い、夫婦としてのあり方など、まさにすべてを一冊にまとめたのが、ずばり「白洲正子のすべて」。その世界は、奥深く興味深く、何度読んでも飽きません。次郎と正子夫婦のことについて書いたページがあります。その中で、「ふたりは、妥協し合うのでなく最大限に自分らしくあり続けた夫婦である。ゆえに、夫婦円満の秘訣は一緒にいないことであった。」という部分が個人的にとても印象に残っています。次郎さんも正子さんも、それぞれ素敵な方ですが、このふたりがパートナーであったからこそ、生き方がいつまでも人の心を打つのでしょうね。自分の世界観をしっかり持ちながら、相手の世界観も尊重できるなんて、理想的です。

    合わせてどうそ。自ら銀座に染織工芸の店を始めた正子さんの著作『きもの美ー選ぶ眼 着る心ー』。心にヒットする言葉がたくさんありますよ。

    「きものは物質にすぎませんが、織った人間の心が、これ程現れるものもありません。」とか。

    「商品というものは一種の生きもので、こちらが生きていれば向こうも生き生きする。」とか。

    とにかく、テンポよく楽しめます。