• 黒地の半幅帯

    浴衣の季節到来ということで、店内には毎日いろいろな浴衣が提案されています。今年は、黒をベースにした半幅帯に注目しています。

    黒という色は、とても難しい色だと思います。ちょっと間違えると上品さに欠けてしまったり、暗いイメージになってしまったり。黒地のきものすっきりと着こなすということに抵抗のある方、意外とたくさんいらっしゃるのでしゃないでしょうか。

    けれど、例えば帯という躯を覆う部分の少ないもので取り入れてみてはいかがでしょう。それも、半幅の帯で。半幅は名古屋帯と違っていろいろな結び方ができますから、うまく可愛さや上品さを表現できます。

    浴衣と合わせるとなお一層引き立ちます。浴衣には、きものでは表現しにくい色や柄がデザインされることも多いので、普段は似合わないと思っている色にもチャレンジでき楽しい冒険にもなります。

    さて、まったく雰囲気の異なる浴衣に黒地の半幅帯をのせてみました。皆さま、どのような印象をお持ちになりますか?

    こちら、総絞りの浴衣。絞りの名門、藤井絞り製。 帯はとてもシンプルなデザインですが、大胆で可愛らしいイメージの浴衣にうまく落ち着きを与えています。

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    こちら、綿紅梅の浴衣。とても面白い模様ですね。色もお洒落です。浴衣にも帯にもある、横に走るラインを活かしました。 シンプルですが、とっても人目を惹く組み合わせではないでしょうか。

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  • 悲しみよ こんにちはーフランソワーズ・サガンー

    サガンの名作『悲しみよこんにちは』 を読まれたことはありますか?今年は作品が誕生して50周年ということで、日本でもサガンの人生を映画化したものが、まもなく放映されるそうです。

    初めて読んだ中学二年の時から、この作品は私にとってなくてはならないものとなりました。「ものうさと甘さとがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しい、りっぱな名をつけようか、私は迷う。」という始まりは、当時の私の心を捉え、小説に引き込まれて行きました。主人公である17歳のセシルに、理性的な女性アンヌが(セシルの新しい母親になる予定の女性)恋愛について次のように諭す場面があります。「あなたは恋愛について少し単純すぎる考えを持っているわ。それは独立した感覚の連続ではないのよ。」…「そこには絶え間ない愛情、優しさ、ある人の不在を強く感じること。」このあたりの台詞がとても印象的で、特に「ある人の不在を強く感じること」という部分は、10代の私には理解に難しかったのですが、いつか理解できるハズだと思いそれから毎年、読み返すようになりました。同じ作品でも、毎年感じ方が違うものです。それまで読み過ごしていたところを、突然面白いと感じたり、逆に大好きだった場面がそうでもなくなったり。作品に対して新鮮さを感じると同時に、自分という人間の新たな一面を発見することにもなります。

    登場人物は17歳のセシル、プレイボーイのセシルの父、その恋人エルザ、父のもうひとりのガールフレンドであるアンヌ、セシルのボーイフレンドのシリル。17歳の少女特有の純粋さ、それゆえの残酷さ、独占欲、完璧なものに対する反発など、微妙に揺れ動く心理状態を軸に物語は展開します。

    さて、この5人が織りなす悲しみの世界とは、いかに‥。


  • 復元 江戸時代のきもの

    ただ今、関西学院大学、時計台展示室にて、現代の職人によって復元された 江戸時代のきもの(当時きものは小袖と呼ばれていました)が展示されています。できるかぎりの当時の技法を使って復元された作品はどれも、絞り、友禅、刺繍すべての点において素晴らしく、美しいものでした。実際に使われた型紙、繭、糸、染料、など普段目にすることのできない貴重なものもたくさん見ることができます。制作工程のビデオ上映も行われており、きものだけ見ていても分からない細かい作業や職人さんの技に見入ってしまいます。見えないところで手を抜いてないものは、きちんとした結果として顕れるのだということを痛感します。6月20日(土)13時半〜「きもの職人こぼれ話」と題して、職人さんの講演があるそうです。入場無料。

    同時に展示されています、江戸時代の小袖裂もたいへん見応えがあります。こんなにも貴重ないろいろを、こんなにも間近で見ることができるなんて、なんと贅沢な企画でしょう!!お近くにお住まいの方、お近くまで行かれる方、ぜひ足をお運び下さい。7月15日まで展示されています。

    関西学院大学文学部文化歴史学科美学芸術学専修


  • 和のUVカット手袋

    ただいま、秘かに人気を博しています。こちらのUVカット手袋、キュートなだけではありません。綿100パーセント素材で、サラサラと気持ち良い感触です。ひと組2800円。猫にするかウサギにするか、楽しい悩みが発生します。

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    着けるとこうなります。腕のほとんどが隠れますから、日焼け防止効果は抜群です。

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    あまりの可愛さに、ニタニタしてしまいます。お気をつけあそばせ。

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  • 奥の細道

    ちょっと趣きのあるのれんです。

    「五月雨の降り残してや光堂」奥の細道より。

    五月雨は梅雨のことで、雨が降り続けば建物は朽ちるけれども、さすがに光堂だけは朽ちさせぬよう降ってくれたという意味だそうです。

    お値段は、ちょっと張ります。芭蕉ですからね。

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  • 昭和54年者

    ワタクシゴトで恐縮ですが、今月30歳になりました。こちらの二反の小紋は私と同い年です。昭和54年に祖母が仕入れました。

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    20年30年あるいはそれ以前の反物が、蔵や箪笥の奥からよく出てくるのですが、その価値が全く損なわれていないことにいつも驚かされます。むしろ、今の時代には更なる価値を持って輝きます。もし自分だったら、長い長い間だれの目にも触れず、存在を認められずにいてそれでも、きちんと「自分」であり続けることができるだろうかと思います。反物はすごいですね。いつもいつも「そのもの」であり続けることができる。時代や流行に流されない芯の強さを感じます。だから本当に美しいのでしょう。

    きものの世界には、染色や技法の奥深さから学ぶことも数えきれないほどありますが、その存在そのものから刺激を受けることもまた多くあります。同い年の反物を目の当たりにし、ブレない人間にならなくてはと痛感するばかり。以前は、美しい反物に囲まれていることをただ単純に幸せだと感じていましたが、段々と、その気持ちに責任感やプレッシャーが加わってきました。その責任感といかに向き合って行くかということに、30代のテーマはありそうです。


  • 生物と無生物のあいだ

    ちまたではインフルエンザが大流行しておりますが、みな様はご無事でしょうか。

    ウィルスとは、生物でもあり無生物でもあるのだそうです。栄養を摂取することもなく、呼吸もせず、老廃物を排泄することもない点では無生物なのですが、いったん細胞に寄生すると、そのDNAを複製し、増えるのだそうです。この自己複製能力を持っているという点において、生物と呼ぶことができるとのこと。今まさに私たちは、生物と無生物のあいだを行ったり来たりするナゾの存在に悩まされ、不安にさせられているのですね。

    ウィルスを生物とするか無生物とするかは未だに決着のついていない議論だそうで、こんな時期に不謹慎な言い方かもしれませんが、こんなにも人を翻弄するウィルスとは、ある意味では魅力的な「何か」なのかもしれません。

    今、私の手元には『生物と無生物のあいだ』という本があります。みな様も一度読まれれば、ウィルスに対する考え方が変わるかもしれません。著者は「生命とは自己複製するシステムである」というだけでは、ウィルスを生物とは定義できないとした上で、自己複製システム、つまりDNAや遺伝をテーマに論を展開し、生命とはいかなるものであるかを本書において述べていきます。

    この本は科学の知識が全くなくても読み進めることができます。小説を読んでいるような感覚です。とても興味深かったのは、細胞にも「ふるまい」方があるというくだり。英語で”behavior”まさに「ふるまい」、立派な専門用語です。読めば、細胞もわれわれと同じようにふるまっていることがわかります。この本を読んで、体の中でも、人と人との関係と同じことが行われていることがわかって、科学をとても人間味があふれる学問分野なのだと考え直すようになりました。理系は苦手という方にもオススメです。

    このようなご時世だからこそ、生命とは何かを見つめてみるよいチャンスではないでしょうか?

    そろそろマスクは外してみませんか。


  • 絲穂の楽しみ方5

    絲穂では、毎朝お香を薫いています。何十年変わらない香りです。お気に召せば、一箱1500円でお分け致します。ちょっとしたプレゼントにも喜ばれています。一日の中でちょっと気分転換をはかりたいとき、お香でリフレッシュするのもいいものですよ。