昨日ご紹介しました桜並木の下を、天馬船に乗って川下りという情緒たっぷりの企画があるそうです。 4月11日(土)、12日(日)の両日行われます。 ちょうど、桜が美しいころかもしれませんね。
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学園花通り
下の記事にある、「関西学院大学へと続く桜並木」である、「学園花通り」の昨日の時点での桜のようすです。関西学院の正門側から撮っているので、キャンパスは写っていませんが、桜の咲き具合がわかっていただけるでしょうか。
今日は入学式。この桜並木が、希望で胸をふくらませた新入生たちであふれかえる日です。
(裏管理人撮影)
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神は細部に宿る
入学シーズンです。桜の季節でもあります。皆さまの心に残っている桜の風景、始まりの風景とはどのようなものですか。
私にとって桜とは、母校、関西学院大学へと続く桜並木です。そこで出会った恩師に教えられた「神は細部に宿る」という言葉を、桜の頃になると毎年心で唱え直します。
「神は細部に宿る」とは、レポートや論文のテーマを決める時のアドバイスとして教えられたものです。面白いテーマを決定するためには、大きな部分を見るのではなく、例えば文章の中で繰り返し使われている言葉や表現などの、小さい部分、細部をまずよく見てみなさい。そこから、大きく面白いテーマを導きだすヒント(神のようなもの)が立ち上ってくるはずだと。初めて教えられた日から、この言葉は私にとっての指針となりました。何かを決めたい時、迷った時、自分を信じたい時、いつも立ち戻るのはこの言葉。 大学では英文学を専攻、現在はきものに携わっている身ですが、まったく異なる世界のように見える文学ときもの、これほどまでに似た世界はないといつも思います。
きものは、まさに細部の世界。一反の布には、染色というレベル、柄のレベル、技法のレベル、糸のレベルなど、様々な細部のレベルがあります。それぞれの細部が意味を持ち、文化的背景を持つ。それぞれの細部に宿る職人さんの技術は、まさに神業。細部が集まったきもの一反は、大きなテーマと言えましょう。
文学作品は紙に文字が書かれたもの、きものは布に模様や色と言った記号が描かれたもの。読み解く対象が紙から布に変わっただけで、取り組み方は学生時代とまったく同じ。いつも心には「神は細部に宿る」という言葉。桜の頃になれば、これからもずっと唱え直される色褪せない言葉です。 自分にしか見えない小さいものを探し、継続し、大きな結果が出るまでじっと待ってみる。つい自分と誰かを較べそうになった時に、支えてくれる言葉です。
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続:男の人ときもの
学生落語に時々ハマる私ですが、今は亡き名人のDVDにハマることもしばしば。五代目古今亭志ん朝さんは、素敵ですねぇ。噺についてはもちろん名人ですから、落語素人の私からはコメントするまでもありません。
目下の楽しみは、高座ごとに違う着物です。志ん朝さんは、まさに粋。江戸小紋のような細かい縦縞で鼠系のお着物をよくお召しでした。それ以外ですと、全く無地のもの。粋でいらっしゃるのですが、品と色香があり、いざ座布団に座された時には、特有の佇まいがあり、この人は絶対に面白い噺を聴かせてくれるに違いないと確信します。 噺の最中に、襟の方が少々着崩れても美しい。何より好きなのは、ソデから座布団まで歩いていらっしゃる、所作。男の着物姿とはこうあるべきだー!といつもホレボレ。 噺とは、座って噺をするだけが噺ではなく、その前後ぜんぶひっくるめて噺なんですね。
噺家というのは、噺をするから噺家なんじゃなくて、噺てない時にこそその真価が問われるのでしょう。 とにかく私は和服姿の志ん朝師匠に見とれているだけですので、落語についてはどなたか語って下さい(笑)個人的には、「搗屋幸兵衛」が好きです。
“落語研究会 古今亭志ん朝 全集 下 [DVD]” (Sony Music Direct(Japan)Inc.(SME)(D))
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男の人ときもの
先日在庫の整理をしていたところ、男物の紋付と袴の生地がたくさん出てきました。昔は、結婚という節目にきっちりと男性のきものも一揃え誂えたものなのですね。自宅の箪笥の中でも父のきものに遭遇することがあるのですが、男性が身に着けるものには女性をハッとさせる雰囲気があります。きっぱりと、美しい。女性の晴れ着とはひと味違いますね。民族衣裳には、男らしさ女らしさというものがきちんと反映されていることを痛感します。
一昨年でしたか、歌舞伎役者の市川団十郎、海老蔵さん親子がパリオペラ座で公演されたときのこと。その特集をしていた雑誌の中に、衝撃的な写真が一枚ありました。黒紋付に袴姿の役者たちが、黄金の間でパリの紳士たちと並んでいるもの。高い高い天井のゴールドで統一された広間に、紋付と袴が見事にマッチし溶込んでいました。本当に美しかった。紋付袴の日本人と、タキシード姿の紳士たち。異なった文化を持つ人々が、何の違和感もなくそこにいました。 紋付に袴という究極にシンプルな装いは、異国のきらびやかな文化に匹敵するほどの、時にはそれを凌ぐほどの力を発揮するのでしょう。
日本の衣裳は美しい。男性が纏うと、なお。
“市川團十郎・市川海老蔵 パリ・オペラ座公演 勧進帳・紅葉狩(DVD付) (小学館DVD BOOK―シリーズ歌舞伎)” (小学館)
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『きもの紀行』シリーズ3ー甲田綏郎の世界、家族の絆が繋ぐ袴ー
立松和平氏の『きもの紀行』第三弾は、精好仙台平(せいごうせんだいひら)という袴に注目してみましょう。
もともとは、仙台藩が生産した御用織物である仙台平ですが、今では甲田綏郎(よしお)さん一家のみが織る大変貴重なものとなりました。身に着けると、その価値はまさに身を以てわかるそうですが、生地に触れてみるだけでもわかります。この袴は、ただものではないという緊張感が指先に走ります。背筋が伸び、拝みたくなるような神々しさが漂います。張りと柔軟性の見事な融合。やはり男性のためのもの。女性には着こなせない位の高さを感じます。
『きもの紀行』に、「一糸現念」という言葉が紹介されています。甲田家に代々伝わる言葉で、立松氏曰く、
機を織るときの心構えであるという。一糸に、糸を紡ぐ人、染める人、織る人、着る人、すべての思いが現れるという意味だろうか。
身に着ける人が檜舞台に立つことを想像し、全身全霊をかけて織る、それが甲田家のやり方。先代の甲田栄佑さんの教えは、綏郎さんと、後継者である娘さんたち、お姉さん、妹さんにしっかりと受け継がれています。
伝統を守り、仕事を守り、家族を守る。容赦なくはいってくるものと戦って、結局、伝統と仕事と家族だけが残ってきた。この道以外に生きる道はないんですね。。。仕事していく過程で、親の心の受け継ぎがわかります。親から子への魂の受け継ぎなんです。一生が勉強です。根気がいる仕事ですから、いつも心を平にして、一心に仕事に打ち込めるのも、家族の支えがあるからこそなのです。
と、綏郎さん。仙台平の神々しさは、甲田一家の絆から生まれ出ているのでしょうね。