• 纈(けち)こそ絞りの始まりぞ

    絞りとは、布の一部をつまんで糸で括ったり、線や形に縫い締め、模様を染める染色法です。日本にもたらされたのは、奈良時代。シルクロードを通って正倉院に伝えられた染色品の中に、絞りの原型が見られます。

    板締めによる挟纈(きょうけち)、ロウ防染の臈纈(ろうけち)、絞り染めの纐纈(こうけち)は三纈(さんけち)と呼ばれ、「纈」とは絞りを意味しました。

    「絞り」というと非常にポピュラーな名称ですが、歴史は8世紀にまでさかのぼるのですね。インドの女性が纏うサリーにも絞りが施されていますし、アフリカやザイールなどでも絞りの技術は見受けられますが、日本ほど繊細で豪華な絞り染めが発達した国はないと言われています。本疋田絞りなどは、まさに日本人の感性の集大成でしょう。日本人が大切にしてきた文化、感性はずっと大切にしたいものです。

    さて、今回『美しいキモノ2004春号』に掲載されました河上繁樹教授(関西学院大学)の資料を参考にさせていただきました。さらに詳しく調べられたい方は、『織りと染めの歴史ー日本編ー』河上繁樹、藤井健三著、昭和堂、1998をおすすめいたします。


  • さて問題です!?

    この、太いロープのようなものはいったい何でしょう?

    答えは、昨年12月6日のブログへ。色は違いますが、糸をほどくと縦縞模様が絞られた着尺になります。これを、竜巻絞りと言います。ロープ状のものが着物になるなんて、摩訶不思議、面白い世界です。

    question

    答えはこちら


  • 無地は手強き相手なり

    個人的に、無地や無地っぽい着物は好きです。帯でいろいろ格を変え、雰囲気を変え、一枚でいろいろなシチュエーションを楽しみます。

    しかしながら、いろいろな帯を合わせることができるからと言って、無地は無難で気楽な着物かと言うと、そうではない。

    いろいろやってみた結果、その答えにたどり着きました。そもそも無地は、柄がない分だけ素材そのものが活きていますから、身に纏う方にも素材力を求めてくる。良くも悪くも、「自分」というものを突きつけられる、纏う度にそんな感じがします。気合いを入れないと、着物に負けそうになることも、しばしば。。。(苦笑)

    気楽に始めた無地着物、気がつけば「自分」との戦いに。これまで、何勝何敗か?!勝ったことなどあっただろうか。。。?(笑)

    これも着物の醍醐味でしょう。「自分」を映し出す無地の着物、手強い相手ですが是非チャレンジを!!


  • 昨日は初釜でした。

    11日は初釜でした。4日の着初めの日と同じ江戸小紋に、今回は喜多川平朗作 松竹梅の袋帯を合わせました。上品さと迫力を併せ持つ平朗さんの帯は、無地のお着物にのせるとグンと格が上がります。江戸小紋は一枚で大変着回しのきくアイテムです。ちょっとしたお食事や観劇には、お洒落な名古屋帯を。初釜や披露宴など改まった場には、格のある袋帯を。自然と躰に添う柔らかさと、皺になりにくい適度な張りも魅力のひとつでしょう。

    hatsugama


  • アンティーク アナスタシアに行って来ました。

    三宮はトアロードにあります、アンティークウォッチと宝石のお店、アナスタシアさんに行きました。アンティークの時計は本当に素敵です。それぞれに歴史があり、物語がある。今、目の前にある不思議をいつも感じます。自分のものにして、身につける度に増す愛しさは、和服へのそれと共通するものがあります。佳きものは、ずっと大切にしたいですね。和装の邪魔をしないシンプルな時計もたくさんあります。見えないところに美しい細工が施されているのも魅力です。

    是非一度、お立ち寄り下さい。可愛らしい猫ちゃんたちがお出迎えしてくれます。博学でいらっしゃるご主人と、キュートな奥さまとのおはなしも楽しいですよ。

    アンティークアナスタシア

    神戸市中央区中山手通り3−7−29 楊ビル2F

    TEL: 078-391-7323


  • 色を奏でる

    6年ぶりでしょうか。本当にひさしぶりに『色を奏でる』を読み返してみました。重要無形文化財保持者の、染色家志村ふくみさんの著作です。皆さまは、美しい桜色は実は花びらからではなくゴツゴツした皮や枝から染められることをご存じですか? 咲いてしまった花からは色は出ないのだそうです。美しい花を咲かせようとたゆまぬ生命活動を続ける幹にこそ桜の精が宿っているとのこと。神秘的なエピソードで、何度読み返しても飽きません。自然の草木からいのちをいただき、染めることを通して、我々人間のいのち、人間として活きることを考えさせられる一冊です。志村さんの言葉とともに載せられている自然の風景写真、草木で染められた絹糸、織物も美しく、大変読み応えがあります。

    『色を奏でる』志村ふくみ・文、井上隆雄・写真 ちくま文庫、1998

    いつか機会があれば、是非志村さんの織られた作品を実際にご覧になってください。自然の美しさ、強さ、優しさに涙が出ます。


  • 昨日は着初めでした

    昨日は2009年の着初めでした。神戸のお客様と和服でディナーに行きました。三宮のMatsushimaというお店。とても落ち着いた雰囲気です。

    野菜重視のフレンチはどのプレートも素材そのもののおいしさが活きています。

    こちらはブリを使ったサラダ。見た目もおいしい一品です。

    buri_salad

    着初めのコーディネート。左:無地紬に鮮やかな帯でインパクトを。右:江戸小紋に本疋田絞りの帯。モノトーンで統一しました。

    ushirosugata


  • 想像させる着物

    墨書きの東京友禅の訪問着です。個人的には銀世界の夜明けをイメージしておりますが、皆さまはどのように感じられるでしょうか?

    きものは、身を包む衣であるだけでなく、一枚の絵として、見る者の想像力に働きかけるものでもあります。

    今年は、きものを通して見えてくるいろいろ、様々なことも合わせて提案できたらいいなと思います。きものは、ただの布っきれではありません。

    kimono


  • 朝のリレー

    朝のリレー

    カムチャッカの若者が
    きりんの夢を見ているとき
    メキシコの娘は
    朝もやの中でバスを待っている
    ニューヨークの少女が
    ほほえみながら寝がえりをうつとき
    ローマの少年は
    柱頭を染める朝陽にウインクする
    この地球では
    いつもどこかで朝がはじまっている
    ぼくらは朝をリレーするのだ
    経度から経度へと
    そうしていわば交替で地球を守る
    眠る前のひととき耳をすますと
    どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
    それはあなたの送った朝を
    誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

    (谷川俊太郎詩集『これが私の優しさです』集英社文庫 より)

    2009年が無事に朝を迎えました。
    善き一年となりますように。
    清々しい朝の詩で始めました。

    皆様はどのような朝を迎えられましたか?

    新年は3日より営業致します。