• カテゴリー別アーカイブ あれこれ
  • 心に留めたい言葉3ー火力についてー

    「親も代から台所仕事を見て七〇年。くらくら、ぐらぐら煮てよいものなど一つもないと考えている。(中略)スープの具材を炊いて行く場合、決して10の火を10で使って煮立ちをつけない。中火の強ー10の火を7か8で使う。(中略)これは大切な大切な味の鍵である。10の火は1から始まる。2−3までが弱火、4は弱火の強。5ー中火、6ー7ー8は中火の強、9ー強火、10最強。加えて0がある。これは余熱。余熱の計算ができるようになれば、仕事は楽しい。愛の世界にも余熱があるでしょ。「残心」なんて言葉を、態度で表せたらね。」(辰巳芳子『あなたのためにーいのちを支えるスープ』より)

    明日はバレンタインですね。手作りされる方もいらっしゃるでしょう。チョコレート作りも余熱が鍵なのかもしれません。よき一日となりますように。


  • 心に留めたい言葉2ー食べつかせるー

    「日本語に「食べつかせる」「食べつく」という、看護人の態度と、病人の様子を表現した、独自の言葉がある。食べつかせるとは、食べられる状態であるのに、食べれば回復が早いはずなのに、食欲がきっかけをつかめず、宙をまさぐっているような人。この人の気の先をつかんで、好みのものを与え、食欲の焦点をつくってあげることをいう。「なんとかして、食べつかせねばー」 これである。みんな、こうしてもらって今日がある。(中略)食べつかせるーこの言葉、現代にこそ流行らせたい。食べつかせられる親の子供に、「キレる」はないであろう。」

    これは、料理家で随筆家である辰巳芳子さんの著書『あなたのためにーいのちを支えるスープ』にある一節です。私がこの本を手にしたには二年前。表紙に色のグラデーションの図が使われているのに興味を持ったからでした。タイトルを見ずに表紙だけ見れば、ファッション関係、衣に関する本に見えます。きものを染める時の色見本と本当によく似ているのです。しかしこれは、紛れもなくスープの書物です。表紙の色体系は、食材の色とスープ作りの技法を示しているそうです。日常生活を衣食住というからには、着ることと食べることは密接に連動しているハズだけれども、具体的に証明してくれるものがなくモヤモヤしていた私にとって、その色体系との出会いは、非常に大きなものでした。食の世界にも色見本があるんだ、やっぱり衣の世界と同じなんだ。単純なことかもしれませんが、救われた気持ちがしました。

    読み進めて行くと、これは単なるスープのレシピ本ではないことが解ります。スープ、おつゆものの意味と役割を改めて考えさせられます。食べるという日常行為がいかに生命にとって大切であるか、親と子、人と人の絆を結ぶためにいかに大切なことであるかということを。上記の「食べつかせる」という言葉にもあるように、食べるという行為はその家々で伝えなければならないものなんですね。読みながら、きものの世界でも、たとえば畳むことや身に着けることは、やっぱり家の中で伝わって欲しいなと強く思いました。家の中で伝わるものには、単なる順番や方法でなくその間にあるもの(それはうまく言葉では表現できないのですが)があり、それが絆になるのだと思っています。我々、衣に携わる者が今すべきことは、家の中で衣が続いて行くようにお手伝いをすることであろうと再認識させられました。お母さんがきものを着られないなら、娘さんが着られるようになってお母さんに教えてあげる、それもひとつの在り方です。買うだけがきものではありませんから。きものとは衣とはどういうものなのか純粋に興味を持って来ていただける店にしていきたいという前向きのパワーを、辰巳さんの本からもらいました。

    皆さまも一度是非、手にしてみて下さい。きものが難しければ、まずは美味しいスープから始められてはいかがでしょうか。

    あなたのためにーいのちを支えるスープ』辰巳芳子著 文化出版社


  • 如月

    陰暦二月のきさらぎには、由来が諸説あるそうです。増す寒さに、更に衣を重ねる意味で「衣更着(きさらぎ)」。草木が生え始める月の意味で「生更木(きさらぎ)」。気候が陽気になる季節の意味で「気更来(きさらぎ)」「息更来」。

    続く寒さの中、温かい春を待ちわびて。春の使者をお届けします。

    kisaragi


  • たとえばショールの美しさとは:2

    shawl3

    たとえばショールの美しさとは、リバーシブルの色使いにありましょう。

    こちらは片面が桜色、もう片面が若菜色、二色楽しめるタイプです。写真のように、上を少し折り返して裏の色を見せて纏ってはいかがでしょう。前でかき合わせると、着物の襟とも重なり、色を重ねる演出です。贅沢にほどこされている房も魅力。広げた形は円形です。

    色に興味のある方は、是非お読み下さい。

    日本の色辞典』吉岡幸雄監修 紫紅社

    日本の色の奥深さを痛感します。


  • 心に留めたい言葉:1

    雑誌『和樂』2009年1月号に、高台寺和久傳(こうだいじわくでん)のお正月迎えがドキュメントとして載っています。その中で、女将である桑村裕子さんが語られる言葉に感銘を受けました。

    以下その引用、心に留めたい言葉です。

    「『和』とともにある仕事の中でも、「残るもの」と「失っていくもの」があることを身近に感じることがあります。気がついたときには遅かったということもしばしばです。めまぐるしい変化のときにあっても、人のもっている時間だけは昔から変わりません。「残るもの」とは、人が人のために費やした時間をもったもので、「残るものは残る」のだと思うようになりました。

    母のきものを染め直しては着るように、女将の「かたち」を習っては自分に染み込ませていくのが今の私の仕事です。頭では反抗することがあっても、体のほうがそのことをよくわかっているようです。」


  • 米沢進之介の仕事:1

    こちらの色無地は、友禅作家の米沢進之介さんの手によるものです。

    作風の特徴は、ずばり!色!にあります。ひと言で色無地と言っても、この深い桃色にたどり着くまで、四度の染めを繰り返しています。このような明るい色は若い方向きかと思われがちですが、いざ鏡に映してみると予想以上に落ち着いた色であることに驚かされます。帯の組合わせ次第で、何歳になっても違和感のない着物だと思います。

    若い時は若いなりの想いで、年齢を重ねるほどにいろいろな想いも重ねつつ、ずっと愛していける色無地ではないでしょうか。

    袋帯は、唐織り「篭目に小花」。上品さと可憐さを兼ね備えた、優れものです。

    ynonezawa


  • アンティーク アナスタシアに行って来ました。

    三宮はトアロードにあります、アンティークウォッチと宝石のお店、アナスタシアさんに行きました。アンティークの時計は本当に素敵です。それぞれに歴史があり、物語がある。今、目の前にある不思議をいつも感じます。自分のものにして、身につける度に増す愛しさは、和服へのそれと共通するものがあります。佳きものは、ずっと大切にしたいですね。和装の邪魔をしないシンプルな時計もたくさんあります。見えないところに美しい細工が施されているのも魅力です。

    是非一度、お立ち寄り下さい。可愛らしい猫ちゃんたちがお出迎えしてくれます。博学でいらっしゃるご主人と、キュートな奥さまとのおはなしも楽しいですよ。

    アンティークアナスタシア

    神戸市中央区中山手通り3−7−29 楊ビル2F

    TEL: 078-391-7323