• 啓蟄

    今日は啓蟄です。虫たちが土から這い出てくる日とのこと。まだまだ寒さは続きますが、見えないところで春は着実に近づいて来ているのでしょう。

    作家の幸田文氏は著作『季節のかたみ』の中で三月を「ものの始まろうとする月、動きだそうとする月、気鋭の月」と表現しています。絲穂のカエデの木々も今はすっかり葉の落ちた状態ですが、時々、山鳥のつがいが止まり何かをついばんでいます。新芽をつついているのでしょうか。私たちの目には簡単に見えませんが、自然の生き物たちには木々の新しい生命がはっきりと見えているのでしょう。自然は、感じ取る春があることを教えてくれます。

    garden_bouze.jpg

    “季節のかたみ” (幸田 文)※文庫版もあります


  • 本日のお客様

    本日、着付けの練習にお見えになったお客様です。お子様の卒業式にひとりで着て出掛けたい!とのこと、今日で2回目の練習ですがすっかり着慣れしたご様子です。

    customer0304_1.jpg

    着物も帯も江戸小紋という組み合わせ。帯は藍田正雄作「引き杢」の名古屋帯。グレーで統一されたコーディネートに、帯の杢目模様が大きなインパクトとなりメリハリを与えます。 生地の状態で見るとちょっと地味に感じる引き杢、いざ締めてみるとたいへんに主張する帯ですね。上質な帯は人の体に巻かれて初めて本領を発揮するとうことを、改めて学びました。

    customer0304_2.jpg


  • うれしいひなまつり

    あかりをつけましょ ぼんぼりに、で始まるひな祭りのうた、誰でも耳にしたことがある有名なうたですが、全歌詞をご存知でしょうか?

    じっくり読んでみると、雛まつりが晴れの日であること、華やかで賑やかな一日であることを改めて感じます。段々に飾られたお人形たちをそのまま描写した詩ですが、笛や太鼓で囃す五人囃子の音、きれいなお内裏さまとお雛さまの姿、そして、ほろ酔いの右大臣が本当に眼前によみがえってくるようで、躍動感や幸福感に満ちています。

    灯火を点けましょ ぼんぼりに
    お花を上げましょ 桃の花
    五人囃子の 笛 太鼓
    今日は楽しい 雛まつり

    お内裏さまと お雛さま
    二人ならんで すまし顔
    お嫁にいらした 姉さまに
    よく似た官女の 白い顔

    金の屏風に 映る灯を
    かすかにゆする 春の風
    すこし白酒 召されたか
    赤いお顔の 右大臣

    着物を着かえて 帯しめて
    今日は私も 晴姿
    春の弥生の このよき日
    何より嬉しい 雛まつり


  • 有職雛

    今年も我が家の有職雛が揃いました。京都、田中人形製。

    hina_1.jpg

    衣裳はすべて人間国宝 喜多川平朗氏によるもの。時を経る毎に増す染色の落ち着きや織りの風合いから、その手仕事の素晴しさを感じます。

    hina_2.jpg

    今から30年前、このお人形たちは縁あって我が家にやってきました。幼い頃は毎年この時期になると、いつの間にか大人たちの手によってこのように段々に並べられ、いつの間にか仕舞われていました。時が経ち、この頃は自分も人形たちをひとりひとり箱から出し、また箱に仕舞う作業に関わるようになると、自然に思い入れも変わってきました。「縁があって」我が家に来てくれた不思議、今もひとつも損なわれることなくある不思議、こうして今年も無事に段に並んでくれた不思議を思うと、当たり前のようにあることどもは決して当たり前でないと感じるようになりました。今月は、有職雛とともに皆様をお待ち申し上げております。

    ※「有職」=「ゆうそく」(←無知な「裏管理人」によるコメント)


  • 春を告げる花守り

    今日から三月です。 桜の花が待ち遠しいですね。昨日まで3日間このブログを占拠していた「裏管理人」も関西に戻り、絲穂にふたたび落ち着いた日々が戻ってきました。

    今井廉作、花守りを図案化した名古屋帯あります。

    こちらは背中に出る部分。

    shiho_P1010743.jpg

    こちらふたつの柄はお腹に出る部分。TPOに合わせて両面お楽しみ下さい。

    shiho_P1010744.jpg

    shiho_P1010745.jpg


  • 裏管理人ふたたび:3

    以前きときと舎を紹介しましたが、他のお客さんがいらっしゃったので、店内の様子を撮影することができませんでした。今回、たまたま僕たちだけだったので、すかさず撮影。前回は伝わらなかった店内の雰囲気をご覧下さい。

    いろんな小物、アンティークが置かれているのですが、座っていると本当に落ち着きます。隠れ家に忍び込んでいるような感じ。

    shiho_P1000777.jpg

    以前ご紹介したときに、「昔のジャズ喫茶」みたいだと書きました。その印象は今回も変わりません。僕が学生の頃は、このような喫茶店がたくさんありましたが、今では喫茶店そのものの数が減り、ジャズを聞く若者というのも少なくなっているようです。学生街には必ず数軒あったこういうお店は、今や希少価値(学生街の雀荘もそうでしょうか)。

    shiho_P1000828.jpg

    自らがジャズ喫茶のオーナーであり、ジャズ評論家でもある寺島靖国さんが、著書の『辛口!JAZZノート』の中で、ご自身が学生の頃に初めてジャズ喫茶に足を踏み入れた頃のことを書いています。ひょっとしたら今もそうかもしれませんが、ジャズ喫茶というのは、他の喫茶店と比べて、初めてのお客さんにしてみれば、何となく敷居が高くて入りづらいというイメージが当時はもっと濃厚だったとのこと。それはそうでしょうね。難解そうに聞こえるので、それなりの蘊蓄とセンスをもっていなければお呼びではないという匂いがジャズにはあります。だから、そのような音楽を専門に聞かせるような喫茶店のお客さん、経営者というのはうるさ型で、知識がない初心者を歯牙にもかけないのではないかと思ってしまいがちです。

    きときと舎には、そのような排他的なところは全くありません。初めてのお客さんでも、よく通う人でも、常に同じ距離感で接してくれます。店内でかかっているジャズについて尋ねると、嫌な顔など全くせずに教えてくれます。

    上の写真を撮ってから2時間くらいが経過した、夜の11時近くだったでしょうか、小学生の娘さんたち3人を連れてやってきたご夫婦がいました。お酒を出す薄暗いお店へ、深夜に近い時間帯でありながら子供を連れてくるということに大変驚いたのですが、どうやら近所で割烹を経営している方のご家族だったようです。つまり、土曜の夜ということもあって、ふだんはなかなかできない家族そろっての晩ご飯をきときと舎でとっていたわけですね。こんな風に家族連れでも気軽に食事が取れるお店です。一方で、カウンターには2次会で飲み直しているお客さんたちもいて、普通のお店ならば相容れないような光景が、違和感なく融けあっています。この店の懐の深さを感じさせる出来事でした。

    ちなみに、上の2枚目の写真に写っている、雑誌を読んで(いるふりをして)いる人は、このブログの本来の管理人です。


  • 裏管理人ふたたび:2

    氷見市海浜植物園に行ってみました。以前、ちょっとだけmicchoが紹介していたことがあります。

    shiho_P1000791.jpg

    遠くから見ると、かなり変わったデザインの建物です。

    shiho_P1000789.jpg

    4階の展望台部分を下から見上げたところ。

    P1000790.JPG

    温室の中は植物の呼吸でむせ返りそうになっています。

    P1000792.JPG

    特になんてことはない植物にしか見えないのですが…

    P1000793.JPG

    すごい名称がついていました。命名が八方破れです。

    P1000794.JPG

    これはなにやら変わった形の木。

    P1000796.JPG

    これも変わった名称ですが、上の木のような柔軟すぎる発想に基づくのではなく、この木自体がもつ機能に由来するようです。

    P1000797.JPG

    サボテンがいっぱい並んでいました。痛いとわかっていても、どうしても指先で突きたくなるのはどうしてでしょう?

    P1000798.JPG

    最上階(4階)は展望スペースになっています。

    P1000799.JPG

    晴れていたら、もっと眺望が開けているのでしょうね。日本海を遠くに望めます。

    P1000800.JPG

    温室が円の形になっているのが上からよくわかりますね。

    P1000801.JPG

    今のところ入場が無料になっています。この日は「漂流物展」という展示が行われていました。氷見の海岸に漂着する、様々なゴミ、ガラクタをそのまま展示しているだけなのですが、遠く中国(台湾かも?)や韓国などからも、ライターなどが流れてきているのを実際に目にすると、海は世界中をつなげているのだという当たり前の感覚が異化されるような気分になります。


  • 裏管理人ふたたび:1

    久しぶりの「裏管理人」です。5ヶ月ぶりに氷見に行きましたので、micchoに代わっていくつか記事を書かせていただきます。

    氷見に着いた日、5ヶ月前にもご紹介した「お寿司の松葉」さんに行きました。好みの違いもあるのでしょうが、関西にいると魚に飢えるという感じになることが多いので、氷見に行くとまず松葉さんでその飢えを癒すのが恒例です。

    まずはお通しとしてブリ大根。いい飴色になっています。

    P1000763.JPG

    お造り。イカ、タイの子和え。

    P1000764.JPG

    マグロ、エビなど。マグロの脂の乗り方が最高でした。

    shiho_P1000767.jpg

    タラの白子です。北海道では「タチ」といって、このようにポン酢で他、味噌汁などにも入れます。最近は高価になってしまい手が出なくなっていますが、子供の頃は冬になるとよくこのタチの味噌汁を食べさせられたものです。正直に言ってグロテスクだったので、当時はあまり箸が進みませんでしたが…。今は大好物です。

    shiho_P1000768.jpg

    やはり氷見に来たんだからブリも食べなきゃ。そろそろ今冬のシーズンも終わりです。

    shiho_P1000770.jpg

    握ってもらいます。白身とイカ。

    shiho_P1000771.jpg

    カニとエビ。エビが舌に媚びてくるのは絶妙。カニも上品な甘みをもっていました。

    shiho_P1000772.jpg

    タイとマグロ。お造りでもマグロを食べましたが、ご飯と一緒になるとまた別のおいしさが出てきます。

    shiho_P1000773.jpg

    ウニとイクラ。イクラを、柔らかすぎず堅すぎず、口に入れたときにちょうどいい具合につぶれるくらいに仕上げるのは難しい。

    shiho_P1000774.jpg

    締めでカッパ巻き。考えてみれば、生のキュウリと酢飯の組み合わせって、不思議ですね。

    shiho_P1000775.jpg

    最後はやはりあら汁が出ます。酒粕が入っていて暖まります。この日は、ぬめりをもった魚のあらが入っていたのですが、あれはなんだったのでしょう? 富山ならゲンゲかもしれませんが、あの魚のぬめりはもっとすごかったように記憶しています。

    shiho_P1000776.jpg

    今回も大満足でした。


  • アーメルド・サンシーオンの仕事2

    時々、揃って和装でご来店下さるこちらの親子、帯の魅力を活かしたコーディネートが素敵です。右、お嬢様がお召しの帯はサンシーオン作のもの。更紗柄なのですが、昨日ご紹介したものとは対照的に繊細なタッチで描かれています。お母様のコーディネートは黒を基調に統一され、帯のアップリケが印象に残りますね。

    kimoto


  • アーメルド・サンシーオンの仕事1

    今から約20年前、フランス人デザイナーでアーメルド・サンシーオンという女性の作ったきものや帯が一世を風靡しました。女性ならではの感性でペーズリーなどの更紗柄が表現されています。こちらの帯はもちろん当時のものですがとても上質な染めが施されており、まったく色あせることがありません。むしろ、シックな無地のきものに合わせると今の時代にこそぴったりとくる作品ではないでしょうか。きものは細かい格子柄の大島です。

    sanshion