今日から三月です。 桜の花が待ち遠しいですね。昨日まで3日間このブログを占拠していた「裏管理人」も関西に戻り、絲穂にふたたび落ち着いた日々が戻ってきました。
今井廉作、花守りを図案化した名古屋帯あります。
こちらは背中に出る部分。
こちらふたつの柄はお腹に出る部分。TPOに合わせて両面お楽しみ下さい。
富山県氷見市の呉服屋 きものの館絲穂
以前きときと舎を紹介しましたが、他のお客さんがいらっしゃったので、店内の様子を撮影することができませんでした。今回、たまたま僕たちだけだったので、すかさず撮影。前回は伝わらなかった店内の雰囲気をご覧下さい。
いろんな小物、アンティークが置かれているのですが、座っていると本当に落ち着きます。隠れ家に忍び込んでいるような感じ。
以前ご紹介したときに、「昔のジャズ喫茶」みたいだと書きました。その印象は今回も変わりません。僕が学生の頃は、このような喫茶店がたくさんありましたが、今では喫茶店そのものの数が減り、ジャズを聞く若者というのも少なくなっているようです。学生街には必ず数軒あったこういうお店は、今や希少価値(学生街の雀荘もそうでしょうか)。
自らがジャズ喫茶のオーナーであり、ジャズ評論家でもある寺島靖国さんが、著書の『辛口!JAZZノート』の中で、ご自身が学生の頃に初めてジャズ喫茶に足を踏み入れた頃のことを書いています。ひょっとしたら今もそうかもしれませんが、ジャズ喫茶というのは、他の喫茶店と比べて、初めてのお客さんにしてみれば、何となく敷居が高くて入りづらいというイメージが当時はもっと濃厚だったとのこと。それはそうでしょうね。難解そうに聞こえるので、それなりの蘊蓄とセンスをもっていなければお呼びではないという匂いがジャズにはあります。だから、そのような音楽を専門に聞かせるような喫茶店のお客さん、経営者というのはうるさ型で、知識がない初心者を歯牙にもかけないのではないかと思ってしまいがちです。
きときと舎には、そのような排他的なところは全くありません。初めてのお客さんでも、よく通う人でも、常に同じ距離感で接してくれます。店内でかかっているジャズについて尋ねると、嫌な顔など全くせずに教えてくれます。
上の写真を撮ってから2時間くらいが経過した、夜の11時近くだったでしょうか、小学生の娘さんたち3人を連れてやってきたご夫婦がいました。お酒を出す薄暗いお店へ、深夜に近い時間帯でありながら子供を連れてくるということに大変驚いたのですが、どうやら近所で割烹を経営している方のご家族だったようです。つまり、土曜の夜ということもあって、ふだんはなかなかできない家族そろっての晩ご飯をきときと舎でとっていたわけですね。こんな風に家族連れでも気軽に食事が取れるお店です。一方で、カウンターには2次会で飲み直しているお客さんたちもいて、普通のお店ならば相容れないような光景が、違和感なく融けあっています。この店の懐の深さを感じさせる出来事でした。
ちなみに、上の2枚目の写真に写っている、雑誌を読んで(いるふりをして)いる人は、このブログの本来の管理人です。
氷見市海浜植物園に行ってみました。以前、ちょっとだけmicchoが紹介していたことがあります。
遠くから見ると、かなり変わったデザインの建物です。
4階の展望台部分を下から見上げたところ。
温室の中は植物の呼吸でむせ返りそうになっています。
特になんてことはない植物にしか見えないのですが…
すごい名称がついていました。命名が八方破れです。
これはなにやら変わった形の木。
これも変わった名称ですが、上の木のような柔軟すぎる発想に基づくのではなく、この木自体がもつ機能に由来するようです。
サボテンがいっぱい並んでいました。痛いとわかっていても、どうしても指先で突きたくなるのはどうしてでしょう?
最上階(4階)は展望スペースになっています。
晴れていたら、もっと眺望が開けているのでしょうね。日本海を遠くに望めます。
温室が円の形になっているのが上からよくわかりますね。
今のところ入場が無料になっています。この日は「漂流物展」という展示が行われていました。氷見の海岸に漂着する、様々なゴミ、ガラクタをそのまま展示しているだけなのですが、遠く中国(台湾かも?)や韓国などからも、ライターなどが流れてきているのを実際に目にすると、海は世界中をつなげているのだという当たり前の感覚が異化されるような気分になります。
久しぶりの「裏管理人」です。5ヶ月ぶりに氷見に行きましたので、micchoに代わっていくつか記事を書かせていただきます。
氷見に着いた日、5ヶ月前にもご紹介した「お寿司の松葉」さんに行きました。好みの違いもあるのでしょうが、関西にいると魚に飢えるという感じになることが多いので、氷見に行くとまず松葉さんでその飢えを癒すのが恒例です。
まずはお通しとしてブリ大根。いい飴色になっています。
お造り。イカ、タイの子和え。
マグロ、エビなど。マグロの脂の乗り方が最高でした。
タラの白子です。北海道では「タチ」といって、このようにポン酢で他、味噌汁などにも入れます。最近は高価になってしまい手が出なくなっていますが、子供の頃は冬になるとよくこのタチの味噌汁を食べさせられたものです。正直に言ってグロテスクだったので、当時はあまり箸が進みませんでしたが…。今は大好物です。
やはり氷見に来たんだからブリも食べなきゃ。そろそろ今冬のシーズンも終わりです。
握ってもらいます。白身とイカ。
カニとエビ。エビが舌に媚びてくるのは絶妙。カニも上品な甘みをもっていました。
タイとマグロ。お造りでもマグロを食べましたが、ご飯と一緒になるとまた別のおいしさが出てきます。
ウニとイクラ。イクラを、柔らかすぎず堅すぎず、口に入れたときにちょうどいい具合につぶれるくらいに仕上げるのは難しい。
締めでカッパ巻き。考えてみれば、生のキュウリと酢飯の組み合わせって、不思議ですね。
最後はやはりあら汁が出ます。酒粕が入っていて暖まります。この日は、ぬめりをもった魚のあらが入っていたのですが、あれはなんだったのでしょう? 富山ならゲンゲかもしれませんが、あの魚のぬめりはもっとすごかったように記憶しています。
今回も大満足でした。
時々、揃って和装でご来店下さるこちらの親子、帯の魅力を活かしたコーディネートが素敵です。右、お嬢様がお召しの帯はサンシーオン作のもの。更紗柄なのですが、昨日ご紹介したものとは対照的に繊細なタッチで描かれています。お母様のコーディネートは黒を基調に統一され、帯のアップリケが印象に残りますね。
今から約20年前、フランス人デザイナーでアーメルド・サンシーオンという女性の作ったきものや帯が一世を風靡しました。女性ならではの感性でペーズリーなどの更紗柄が表現されています。こちらの帯はもちろん当時のものですがとても上質な染めが施されており、まったく色あせることがありません。むしろ、シックな無地のきものに合わせると今の時代にこそぴったりとくる作品ではないでしょうか。きものは細かい格子柄の大島です。
以前に、米沢氏の作品の特徴は色だと申しました。こちらの色無地も四度染めされたもの。非常にあか抜けたものです。今日は、同作家の名古屋帯を合わせました。作風の第二の特徴は、描き方にあると言えるでしょう。重々しい感じではないけれども、しっかりと存在感があり、同時にしなやかな動きも感じられます。空間の使い方が絶妙ですね。独特の色使いと描き方が相俟って、モダンな仕上がりです。同じ作家の作品どうしを合わせると煩くなることもありますが、米沢氏の場合はすっきりとバランスのとれたコーディネートになります。
立松和平氏の『きもの紀行』シリーズ二回目は、黄八丈を作る山下八百子さんをクローズアップします。
黄八丈は、八丈島の草木で染められた織物です。黄色、樺色、黒の三色で構成される黄八丈、その特色は「この三色で縞と格子を織り込み、絣がないことである。色の布といってよい。シンプルで粋である。」と立松氏。その美しさゆえ、黄八丈はかつて江戸に年貢として納められていたそうです。作り手は、年貢のためひたすら苦労に耐えたとのこと。
無形文化財保持者の山下さんは、「我慢せい我慢せい、我慢していれば、下駄についた土もいつか自分のものになる」というおじいさまの言葉を聞きながら、幼い頃より黄八丈作りに関わって来られたそうです。山下さんの作品から感じられる優しさは、苦労と我慢を乗り越えた末にあるものなのかもしれません。
山下八百子作、草木染め黄八丈。美しく優しい三色のグラデーションをお楽しみください。
『きもの紀行』シリーズ一回目はこちら。