• 二十四節気ときもの

    きものジャーナリストの中谷比佐子さんの著書に、『二十四節気ときもの』があります。40年間を着物で生活し続けた中谷さんの衣替え術を紹介したものです。一般的には、6月と9月が単衣の時期、7、8月が薄物、それ以外は袷の季節と言われておりますが、着物で365日を過ごすと、そのやり方ではしっくり こないとのこと。

    そこで参考にすべきは、立春から大寒までの二十四節気。例えば、5月5日頃の立夏を目処に単衣の着物を着ると、体に無理がないそうです。同時に襦袢や下着も涼しい素材に変えると、絹の心地よさがうまく伝わってくると書かれています。11月8日頃の立冬で、ようやく全国的に袷に切り替わる感覚。読み進めると、いろいろと共感すること、参考になることがたくさんあります。

    二十四節気それぞれの意味と、その時期のうまい着こなしが提案されており、コーディネートに迷った時の参考にお勧めです。中谷さんご自身の365日の着こなしページもあり、読み応え抜群の一冊、楽しいですよ。

    ちなみに、今日は大寒です。モノトーンの世界から、春の兆しを意識した、例えば沈丁花のイメージでピンク色をコーディネートに取り入れてはいかがでしょう?と、中谷さんの提案です。

    春が待ち遠しいですね。


  • 日射しに春を待ちわびて

    雪の峠も越え日射しが差し込むと、春らしい明るい色を美しく感じます。ただ今店内、こちらの二点をディスプレィして皆様をお待ち申し上げております。

    着物はどっと柄の無地、織物です。帯は織楽浅野。白と青が上品に織り出されています。シンプルですっきりした組合わせですね(織楽浅野については、こちらこちらをどうぞ)。

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    ボカシの無地的小紋に、ふきのとうの帯を合わせて。帯で季節感を表現するのは、和装の醍醐味ですね。

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  • センター入試

    今日は、大学センター試験の日です。

    富山では雪の影響もあり、まず会場に到着するまでの交通網なども、気がかりですね。

    ずいぶんと前のことになりますが、まだ暗い中、朝早くから電車とバスを乗り継いで富山大学に向かったことを、今でも覚えています。試験前の緊張感は独特で、心にしっかりと焼き付いています。

    できるだけの努力をした後は、度胸しかありません。センターは、本命大学の試験に備えた度胸試しの場として、緊張しながらも伸び伸びと受けました。
    いやはや、懐かしい。

    その時の、伸び伸びした感覚が、その後の試験にうまく活きました。自分のモチベーションやテンションを、いかにうまくキープできるかが、合格への鍵だと思います。

    受験までは、点数、番数、何かと数字で決め付けられてしまい、一喜一憂の毎日でしょうけれど、人と較べることなく、自分らしさ、自分のペースを大切に、受験生の皆さん、頑張ってくださいね。


  • 藤井絞のひとつ身──きみどり色はいかが?──

    今年は年明けから、結婚されるお客様、ご出産されたお客様が続き、こちらも嬉しくなる縁起の良い始まりです。訪問着や留袖など絵羽になっている着物をお勧めする時間は、とても充実しています。広げると美しいフォーマル着物は、まさに着物の時間!!わくわくしますね。

    とりわけ、赤ちゃんのひとつ身をお勧めする時間は格別です。人生のスタートとなる大事な衣ですから、ただ嬉しいだけでなく厳かな気持ちにもなります。女の子のひとつ身と言えば赤やピンクが目立ちますが、例えば鮮やかなきみどり色など、いかがでしょう。小さな蝶や花模様が、可憐な女の子らしさを演出します。お馴染み、藤井絞の逸品です。

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  • 温かい部屋と雪景色

    昨日の昼間の様子です。粉のような雪が舞っておりました。

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    朝から風が強かったのですが、夕方になるとおさまり、舞っていた雪が積もり始めました。雪はしんしん積もると表現しますが、本当にしんしんいう音が聞こえ ますね。その情景を温かい部屋から眺めていると、素敵な気分になります。そこにクラシックが流れ、美味しいコーヒーがあれば最高。このカップは、久しぶり に出しました。外の寒さも忘れ、しばし癒される時間です。

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  • 寒波が来ています

    とても寒いです。

    いったん溶けた雪ですが、また積もり始める気配です。降り始めるまでが、本当に寒いんですよね。肌が切られるような寒さ。あまり歓迎しない一方で、それこそが北陸の冬を感じさせる寒さで、どこか嬉しい気持ちもあります。

    寒さに負けず、是非お越し下さいませ。このごろ、ウィンナーコーヒーが人気です。ココアもあったまりますよ。

    二階で着物の時間を満喫された後は、興奮冷ましのミックスジュースが美味しいそうです。ホットヨガもいいですけど、美しいものを見てテンションを上げる着物の時間も、心身ともに温まる時間です。

    外は寒波ですが、絲穂でしばしホットな時間はいかがでしょう。


  • 裏管理人独白:「悪徳の勧め」

    裏管理人です。日曜はこのサイトの通常の更新がない日ですので、その機に乗じてちょっとだけ書いてみます。

    先日の朝日新聞の夕刊に、経済学者で東京大学教授の岩井克人さんが、「悪徳の勧め」というちょっと面白い表現を使って、昨今の停滞している経済状況に関して、提言をしています。

    岩井先生は、まず経済学者ケインズによる「不況」の定義を紹介してくれます。

    不況とは、人が本来商品を買う「手段」であるお金を、将来への不安に備え、商品より欲しがって貯め込んでしまう状態だと、いったそうだ。お金さえあれば安心だと。で、物が売れないから売り手は値段を下げる。でも売れない。この状況をお金を貯めている側から見ると、お金の価値が上がることになるため、ますます貯め、また売れなくなるという悪循環。

    今のデフレ状態は、まさにこのケインズが定義する状況とぴったり符合しますね。各業界の一部の企業が、熾烈な価格戦争の中で商品やサービスの値段を下げることによって、「勝ち組」となっているわけですが、多くの経済学者や有識者が指摘している通り、長い目で見ればこの状況は、完全に自分の首を絞めていることにしかならないわけです。貯め込まれることで、お金は流れなくなってしまうと、最終的には「勝ち組」の商品やサービスも売れなくなり、結果的に自滅へと向かうのですから。

    岩井先生は、このような状態においては、各種のセーフティーネットの創設はもちろん必要だが、「悪徳の勧め」も必要だと述べています。

    質素、倹約に努めるという個々人の美徳的な行動が、まとまれば結果として、さらに人々の生活を脅かすものになる。昔から多くの経済学者が指摘していましたが、浪費や美食などの多少の悪徳を許して経済を刺激しないと、経済は生きていけないのです。

    「悪徳」という言葉に差し障りがあるならば、「心の余裕」とでも置き換えてもいいのかもしれません。今の日本の経済状況は、無駄な脂肪がない筋肉質の身体を通り越して、飢餓状態で骨と皮だけの身体になりつつあります。でも、一方でお金は万が一のために貯め込んでいる。お金は貯めているけれども、それを使わずに、自らを飢えへと追いやっているような状態です。岩井先生の言う「悪徳」とは、このような経済的身体に与えるべき「食べ物」だと言ってもいいでしょうか。お金を「食べ物」に交換することで、お金の流れが生じ、停滞が改善されていく一助となるのです。

    長く続く倹約生活には気持ちも荒んできます。自分を励ます意味で、「悪徳」をちょっぴりかじってみてはいかがでしょうか。

    岩井先生の『ヴェニスの商人の資本論』は面白いですよ。シェイクスピアの有名な『ヴェニスの商人』を、経済学の視点、特に「交換」という概念からダイナミックに解釈した論が巻頭に収められています。